ことのは文庫

story

生まれつき人や物から伝わる感覚を過敏に受け取ってしまう、
感受性の高さに生きづらさを覚えてきたはるかは、
ある夜、ウエディングドレスを抱えた男・みやびと出逢う。
彼に突如懇願されたのは、亡き者の心残りだった時間・場所・場面を演出し、
再現して空に送りだす、『劇団拝ミ座』の活動協力だった。

劇団の長にして霊視と憑依の術を用いる、雅。
劇団の一員で衣装・メイク全般を担う、和泉いずみ
霊を自分に憑依させ、誰よりも近くから想いに寄り添う、遥。

亡き者の「未練のひと時」と向き合うことで、生きる者もまた、自分の心と居場所を取り戻していく。
徐々に劇団三人の繋がりも強まる中、遥はやがて雅の大きな秘密に触れることとなる……。

story

  • 本作の主人公。都内勤務の会社員。心優しくしっかり者。
    人や物から伝わる感覚を過敏に受け取ってしまう体質に、
    長年悩み続けてきた。
    雅から劇団拝ミ座の活動協力を求められたことで、
    次第にその力の意義を見出していく。

  • 劇団拝ミ座の団長であり、霊視と憑依の術を持つ霊能力者。
    美しい和装に身を包んだ、愛嬌たっぷりの美丈夫。
    性格は飄々としたマイペースで、人を振り回すこともしばしば。
    それでも亡き者の心に寄り添わんとする強い気持ちが、
    周囲の人の心をも強くひきつける。

  • 劇団拝ミ座の衣装・メイクを担当する霊能力者。
    完全無欠の職人気質イケメン。
    基本的に自らの仕事以外に興味はないが、
    長年苦楽を共にした雅の危うさを気にかけてもいる、ツンデレな一面も。 実は和菓子好き。

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「さあてと。これで里帰りの準備はオッケーかな」
 八月十三日。劇団拝ミ座の盆休み初日。
 珍しく早朝から身支度を進めていた男──御護守雅の様子を、瑠璃川和泉は無言で見つめていた。
 とはいえ、一般的に外泊で必要な生活小物はバッグに詰められてはいない。そういったものはすべて、滞在先の高御堂葉月の家に備えられている。
 準備されたのは田舎までの長い道のりをともにする書籍数冊と、スマートフォンに充電器、必要最低限の着替え。先々週郵送されてきた、今回の「お役目」についての詳細な調査報告書。
 そして何より、この男の古巣に代々伝わる紺羽織だ。
「……うっわ! びっくりしたあ! 無言で後ろに立たないでよ和泉。しかもそんなどす黒い影と一緒にさあ」
 こちらに気づいた雅の肩が大げさに跳ね上がり、癖のある茶髪がふわふわと揺れた。

『黒髪の縫製者と腐れ縁』

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  • 主人公が憑依することによって、未練と向き合うというのが、今までに見たことのない物語でした。
    序盤からの気になる展開の数々に、この先はどうなるのだろう? とわくわくしながら楽しめました。
    それぞれが得意なことや、できることを活かして、未練解決に導いていく拝ミ座の面々も素敵なキャラばかりで良き。
    シリーズ化だけでなく、映像化にも向いていそうな作品だと思いました!

    レビュアー

  • 優しさの大渋滞……! 登場人物全員が優しい!
    しかも優しいだけでなく、亡くなった方の心残りのひと時を全力で演出する、
    「劇団拝ミ座」の雅さんと和泉さんの真っ直ぐな仕事ぶりが素敵です。
    もちろん主人公の遥ちゃんも素敵!
    相手に寄り添う共感力と深い優しさを持ち合わせているだけでなく、
    亡くなった方の心と誠実に向き合う遥ちゃんの姿に胸を打たれます。

    書店関係者

  • 亡くなっても消えない心残りに向き合い手を差し伸べてくれる劇団拝ミ座。
    それは死者のみならず残された人達の心もあたたかく解し救うもの。
    彼らの優しい心に触れ、私の心もじんわりと浄化されていきました。
    誰かを想って行動出来る強さと優しさ、ごめんなさいの後には ありがとう がきこえてくるとてもすてきなお話でした。

    書店関係者

劇団拝ミ座 未練のひと時と異能の欠けた青年

表紙
  • 著:森原すみれ
  • 装画:みっ君
  • 発売日:2025年4月21日
  • 価格:803円(本体730円+税10%)

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