特殊な水の能力が宿る一族に無能として生まれた少女・まり
家族に虐げられた末、贄として湖へ沈められる。死を覚悟した彼女が辿り着いたのは、青龍が統べる静かで穏やかな世界だった。
「愛を知れ。他者を愛し、
愛される喜びを知れ」

不器用ながらも寄り添う青龍の姿に触れ、鞠は初めて愛される意味を知っていく。
一方、何故家族から愛してもらえなかったのか、過去の思いも捨てきれず――。

青い桜が舞い散る龍神の国で様々な愛のかたちと恋に出会う和風ロマンスファンタジー


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  • 代々女性に青龍の力を宿して生まれてくる御堂家の次女で、鞠はその力を持たずに生まれてきた。
    小さい頃から母親に虐げられ、父親と姉からは見放されて育つ。
    ある日母親の能力が陰りを見せ、鞠のせいだと罵られ、青龍の生贄として湖に投げ入れられる。

  • 水をつかさどる龍神。
    特別であるが故の孤独感を抱えている。
    ぶっきらぼうな口調で話すせいで冷たいと誤解されやすいが、ただ不器用なだけの優しい神。
    弟の藍玉とともに青の国で暮らしている。

  • 青龍の弟。兄のことを慕い、憧れている。
    いきなり現れた人間の鞠のことを煙たく思うが、青龍を取られるのではないかという嫉妬から。
    青龍からはアイと呼ばれている。

 青い桜の花びらが降る中、私は小さな籠を持って青龍の屋敷の玄関に立っていた。
「鞠、本当に大丈夫か」
「はい、茶葉を買いに行くだけですから」
 村から少し歩いたところにある街では、月に一度、市が立つ。そこへ茶葉を買いに行く。それが今日の私の仕事だった。
 安心してもらうために微笑んでみせるけれど、青龍様の眉間に刻まれた皺はさらに深くなる。
「やはり、他の者に行かせよう」
「どうしてですか」
「それは、その」
 歯切れの悪い言葉に、胸の奥がギュッと締め付けられる。
「私が、頼りないからでしょうか」
 籠の持ち手を握りしめる手に力が入る。
 自分が頼りにならないことはわかっていた。それでも任せてもらえたことは、少しでもこの屋敷の一員だと認められたのだと思っていたのに。
「そんな顔をするな」
 青龍様の長い指が私の唇にそっと触れて初めて、自分がきつく唇を噛みしめていたことに気づく。
「お前が頼りないからでも、信用できないからでもない」
「なら、どうして」
「……それは」


書き下ろしショートストーリー

『青龍様は心配性』

  • こんなにもたくさんの心が、鞠を囲んでいたのか。
    そのことに鞠とともに驚き、その上で鞠が姉に願ったことに、
    彼女の心の成熟を感じた。
    自分の意思で生き、自分の意思で生きる場所を決める。
    それだけではなく、皆の幸せを願う。
    これは、丁寧に丁寧に紡がれた、大人のための寓話
    。辛くなった時、寂しくなった時、心細くなった時。
    そんな時に、ゆっくりゆっくり読んでほしい物語。

    レビュアー

  • 愛とは本当に何なのだろう、と考えてしまいます。
    能力が無くて蔑まれて、それでも母の愛を求めて……。
    鞠ちゃんの心を思うと胸が締め付けられます。
    鞠ちゃんに愛がわかっていない、という青龍様も無愛想で伝わりにくい愛情表現の不器用さ。
    そこがまた青龍様の誠実さの表れでもあるのでしょうか。
    お父さんが2人目の子どもを望んだ気持ちも、お姉さんのさらけ出された心の内も読めて良かったです。
    優しい鞠ちゃんは温かい愛を知り、青龍様の元で幸せになって欲しいです。

    書店関係者

  • 愛にも色んな種類がありますよね。
    でも愛とはいったい何でしょう。
    王道のシンデレラストーリーでありながら、「合わせ鏡」として読みながら私自身も心と向き合いました。
    自分を卑下することをやめて、自分の心が指し示す道のど真ん中を歩いていけるような素敵な物語です。

    レビュアー

青龍と水の花嫁 生贄は永遠に深き愛を知る

表紙
  • 著:望月くらげ
  • 装画:芹田ジョン
  • 発売日:2026年6月22日
  • 価格:781円(本体710円+税10%)

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